文豪「夏目漱石」研究者、恒松郁生氏がロンドン漱石記念館を再オープン
著者:大澤史來
再開館したロンドン漱石記念館内部(C)J News International.写真:大澤史來
今月8日、ロンドンの漱石記念館は再びオープンした。以前ロンドン漱石記念館の館長を務め、「夏目漱石イギリス留学研究」の第一人者でもある恒松郁生氏は自らの邸宅を改装し再開館をした。2016年に旧記念館は資金面でとても厳しい状況に追い込まれ、やむおえず閉館を迫られたが、多くの夏目漱石ファンや研究者の熱烈な要望に恒松氏が応える形となった。
恒松氏は自らが英国に留学している時に漱石の作品と出会い、彼がどのような留学生活をしていたのかを調べていくうちに、彼の作品のみならず、夏目漱石という一人の人間の虜になっていった。そしてそれ以降、生涯を掛け、ありとあらゆる夏目漱石に関する書籍や文献、写真を買い取り、今ではその数、1万点にも及ぶという。その中には各国の言語に訳された漱石の本や、漱石が当時集めていた本と全く同じものを恒松氏も取り揃えてた。「夏目漱石」を知れば知るほど、彼にもっともっと魅了されているという。
館内には飾りきれない多くの資料 (C)J News International.写真:大澤史來
一般的な夏目漱石のイメージは何か堅物で、彼にとってのイギリス留学はただ苦痛でしかなかったイメージであったが、そのイメージを覆すような真実もここでは知ることができる。一人の日本人がどのようにイギリス文化から影響を受け、また逆に、漱石と関わったイギリス人も彼から多大なる影響を受けたことが今回の訪問で初めて分かった。
そして、多くの珍しい資料がある中、特に注目なのは、今年5月1日に新天皇に即位された、若かりし浩宮殿下がイギリスにご留学されていた当時のお写真を拝見できることであろう。殿下は1983年から1985年にイギリスのオックスフォード大学に在籍されて、その間に旧漱石記念館にも足をお運びになられ、元館長である恒松氏とも夏目漱石について語られたという。
ゲストブックに殿下の直筆(C)J News International.写真:大澤史來
また、恒松氏は漱石の本を英語に訳すなど、我々、日本人に漱石の研究を伝えるだけではなく、世界に日本の有名な文豪、夏目漱石を紹介するなどの世界的貢献もされている。
英語に訳された文豪夏目漱石の著書(C)J News International.写真:大澤史來
彼の夏目漱石への情熱はとても強い。しかしまた、研究者としての知識だけではなく、一人の人間としての深い味わいもあり、多くの漱石ファンや研究者たちに支持を受けている。そして彼自身もこれまでの自分の研究内容や資料をより多くの真剣に研究を行なっている人々と共有したいという想いはとても素晴らしいことだと感じる。
惜しみなく資料の説明をされる館長の恒松郁生氏(C)J News International.写真:大澤史來
*ロンドン漱石記念館は所在地は非公開であり、記念館の会員、研究者、著書がある方のみの観覧を受け付けており、紹介制。
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