ロンドンから生の声を配信:新型肺炎、コロナウィルス感染症(CODIV-19)とイギリスの現状(4月1日現在)

著:大澤史來

現在世界中で87万3千人以上がコロナウィルスに感染していることが確認されている。その内、死者は約4万3千人にも及ぶ。これは検査を実際に行い、行政に確認されている数であり、まだ自覚症状もない、もしくは既に症状が悪化し身動きが取れない理由で検査を受けていない人がいる事を想定すると全体的な感染者の数はもっと多いであろう。


増え続ける感染者

特に注目なのはアメリカである。3月14日の時点では2千人強の感染者数であったが、26日では8万2千人以上に跳ね上がった。この3週間で感染者が最も多かった中国とイタリアを抜き、感染者数約19万人、今も尚、感染者は増え続けている。一方欧州ではイタリアの感染者と死者数は完全外出禁止令が発動された今でも増え続け、イタリアから発信されるソーシャルメディアからは悲痛な叫びと共に、お互いを支え合う様子が伺える。

イギリスの対応とその経緯

イタリアやフランス、ドイツ、スペインの感染者が増え続ける中、イギリス国内の感染者数は比較的低い状態を保っていたが、それでも3月10日の時点では感染者数373人、死者6人となっていた。

翌日11日には世界保険機構 (WHO)が「新型肺炎、コロナウィルス感染症(CODIV-19)のパンデミックとみなす」と表明した後、敏速な対応として英政府は1200億ポンドの緊急支援金の用意をした。

13日には大勢が集まるプレミアリーグやロンドンマラソンなどの大型イベントの中止、又は延期とし、16日、ボリス・ジョンソン英首相は国民に対し、自宅からの勤務を勧め、医者や看護師、警察等のキーワーカー以外の人々の不必要な外出を避けるように指示を出した。しかし多くの国民はそれほど深刻な事態とは受け止めず、まだかなりの人々が通勤など普通の生活を行なっていた。この時点で感染者数約1,500人、死者55人であるが、政府は1万人が既に感染している恐れがあるとも伝えた。

18日になりイギリス国内の学校全てが休校、この時期予定されていた卒業試験なども全てキャンセルとなる。その2日後、イギリス政府は全国のパブ、ジム、レストラン、劇場など多くが集う場所を完全閉鎖に打ち切り、また、正規雇用者には80%の給与の保障も与えられた。

23日、徐々にイギリス全体の雰囲気も徐々に深刻化を増し、今後感染者数が劇的に増え、国民保険制度(NHS)への負担による崩壊の可能性を危惧された。医療関係者などキーワーカー以外の人々の外出を完全に禁止し、それに従わなかった者に対し、警察が逮捕、罰金を科すようになると夕方の定期会見で伝えた。同日、チャールズ英皇太子がコロナウィルスによる感染も認められた。

26日、英政府は自営業者、フリーランス労働者に対しても80%の給与保障を発表すると共に、外出禁止令を破った者に対しては警察官による逮捕、最高で960ポンドの罰金を科すことも決まった。同日、イギリス全土で国民は、夜8時丁度、一斉に自宅前に出て、拍手、喝采、打ち上げ花火などを打ち上げて、過酷な労働を強いられている国民医療(NHS)に関わる労働者、医者、看護師、事務員への労いと応援を行なった。

その翌日27日ボリス・ジョンソン英首相とマット・ハンコック英保健相がコロナウィルスに感染していることが判明。

28日、クリス・ホウィットニー英最高医療責任者もコロナウィルスの症状をうったえた後、検査で陽性と認められる。30日、ドミニク・ラーブ英外務大臣は7,500万ポンドを投じ、感染が多く拡大し、国境を封鎖している国で帰国困難な約30万人の英国民の救助をすると発表。

ロンドン市内の現状

本格的に外出禁止令が発令され、多くの人が集うレストラン、パブ、カフェ、公園、劇場、映画館、衣類や雑貨店は閉まり、3月23日よりロンドン市内の公共交通機関の殆どの本数は減らされた。しかしキーワーカーである医療関係者、警察、警備、その子供達を受け入れている学校の教師、スーパーの店員は普段以上に忙しく通勤をしている。それに加え、建設労働者も同じように先週まで働いていたため、交通機関の本数が減ったことにより、毎朝地下鉄は多くの通勤者で混み合い、2メートルの他人との距離を保つ事もできない状態になっていた。

外出禁止とはなっているものの、スーパーへの買い物、運動のため近所をジョギングしたりすることは可能であり、リモートワークができる人にとってはそれほど苦になる状態ではない。26日に外出禁止令を無視した者への罰金制度が執行される直前は天気の良い週末にはロンドン郊外の野生の鹿が600頭以上生息するリッチモンドパークには多くの人が集まっていた。「あれだけ大きな公園なら大丈夫だろう。」という考えで訪れていたようだが、商業施設が全て閉鎖された現状では誰もが同じことを考えて同じ場所に集まってしまう。そのため、リッチモンドパークをはじめとする公園も閉鎖されることとなった。

当初ロンドン市内のスーパーでもトイレットペーパーなど様々な商品がスーパーから姿を消したが、在庫が一切なかったわけではなく、スーパーに陳列してある商品数とソーシャルメディアの影響を受けてパニックを起こし殺到した消費者のデマンドが狂ってしまっただけの事であった。今では普通に商品は並び、入店できる人数制限をしながら、営業を行なっている。スーパーの入り口では一定間隔を保った買い物客が行儀よく並び、自分の順番を待っている。

また、大手スーパーではなく、ローカルショップでも日用品や食材は簡単に手に入れることができる。これらのショップは地域によって異なるものの、インド人、パキスタン人、アラブ人、韓国人等が経営し、独自の仕入先があるからである。

マスクや除菌ジェルはそれほど使用しない国民性であるため、薬局などの店頭で手に入ることは少ないが、それでも除菌ハンドソープ、除菌スプレーは普通に買うことができる。

今週より本格的に交通機関を使用する人々や車を運転する人々に警察官が不法外出者がいるかどうかのチェックが強化されていた。東ロンドンに位置する広大な商業施設エクセルセンターを臨時医療施設として使用することも決められ、バージンアトランティック航空、イージージェット航空の乗客乗務員達もスタッフとして参加するそうだ。イギリスは着々と今後起こりうる国内でのパンデミックの準備を進めいている。


自宅での過ごし方

リモートワークの人々は週日は会社に勤めている時間帯で自宅で仕事をしている人が多く、学生も学校から課題や宿題を与えられて、学校の時間割通りに行うように指示されている。しかし、通勤時間やソーシャルアクティビティが一切ないため、個々に時間の使い方を工夫し始めている。

イングリッシュ・ナショナル・バレエ団芸術監督のタマラ・ロホ氏はオンラインレッスンとしてライブ中継でソーシャルメディアを使い流し、個々でレッスンを行っている先生達もそれぞれ音楽、ヨガ、武道等のレッスンをオンラインで行い始めている。また米国イェール大学や東京大学では完全オンライン講座に切り替えた。多くの会議もネットを通じて行われている。

コロナウィルスの影響は我々人々の健康のみならず、生活習慣、今までの常識にも影響を与えていくのであろう。

J News International (イギリス拠点)

イギリスを拠点に欧州を中心としたニュースを伝えるウェブサイト!

0コメント

  • 1000 / 1000